Route du Rhum(ルート・デュ・ラム)

# Route du Rhum(ルート・デュ・ラム)
## 大西洋を一人で渡る冒険 ― 歴史から2026年大会まで

今日は、Route du Rhum(ルート・デュ・ラム)の歴史から、レースの仕組み、名勝負、そして2026年大会までを解説します。

1999年のミニ・トランザットでグアドループまで航海した経験があると、このレースには特別な思いがあります。

## 1. Route du Rhumとは?

フランス語のRoute du Rhumは、直訳すると「ラム酒の航路」。

フランス北西部ブルターニュのサン・マロから、カリブ海のグアドループ島まで、たった一人で大西洋を横断する外洋ヨットレースです。

創設:1978年

開催:原則4年に1度

航路:サン・マロ → グアドループ島ポワンタピートル

距離:約3,542海里(公称)

方式:シングルハンド、途中寄港なし、外部からの物理的援助なしを原則とするレース。

ミニ・トランザットと大きく違うのは、カナリア諸島などへの中継寄港がなく、最初から最後まで一気に大西洋を渡ることです。

## 2. 1978年 ― 伝説は98秒差から始まった

第1回大会の優勝者は、カナダ人セーラーのマイク・バーチ(Mike Birch)。

小さなトリマラン「Olympus Photo」で出場し、フランス人ミシェル・マランの大型モノハル「Kriter V」を、わずか98秒差で破りました。

約23日間も航海して、差はたった1分38秒。

この勝利は、外洋レースにおけるマルチハル艇の可能性を世界に示した象徴的な出来事でした。

そして、ルート・デュ・ラムは、単なる大西洋横断競走から、ヨットの設計思想そのものを変える舞台へと成長していきます。

## 3. 歴史をつくったセーラーたち

### 1990年 ― フロランス・アルトー(Florence Arthaud)

トリマラン「Groupe Pierre 1er」で総合優勝。

女性として初めてこのレースを制し、フランスの国民的セーラーになりました。

### 1994年・1998年 ― ローラン・ブルニョン(Laurent Bourgnon)

「Primagaz」で2大会連続総合優勝。

1990年代の高速トリマラン時代を象徴する選手です。

### 2002年 ― ミシェル・デジョワイヨー(Michel Desjoyeaux)

「Géant」で総合優勝。

ヴァンデ・グローブでも活躍した「教授」が、マルチハルでも強さを示しました。

### 2018年 ― フランシス・ジョワイヨン(Francis Joyon)

「IDEC Sport」でフランソワ・ガバールをわずか7分8秒差で破り、総合優勝。

第1回大会を思わせる劇的な接戦でした。

### 2022年 ― シャルル・コードリエ(Charles Caudrelier)

フォイリングULTIM「Maxi Edmond de Rothschild」で優勝。

6日19時間47分25秒という大会最速記録を樹立しました。

## 4. ヨットの進化を映すレース

### 1990年代:ORMA 60

60フィートの高性能トリマラン。

ローラン・ブルニョンらが活躍した時代です。

### 現代:ULTIM

最大約32メートル級の巨大トリマラン。

フォイルで船体を浮かせて走ります。

### 以前のIMOCA

キールとダガーボードで安定性と風上性能を確保していました。

### 現代のIMOCA

巨大なフォイルで船体の抵抗を減らし、さらに高速化しています。

ルート・デュ・ラムの面白さは、船の進化と人間の冒険が同じ舞台で競い合うことです。

最新のフォイラーが登場しても、最後に船を動かすのは一人のセーラー。

睡眠不足、故障、天候判断との戦いは、昔も今も変わりません。

## 5. 大西洋横断の航路と戦術

レースの基本的な流れは、次のようになります。

### ① サン・マロを出発

潮流の強いブルターニュ沿岸からイギリス海峡へ。

### ② ビスケー湾・北東大西洋

秋の低気圧や前線を避けるか、風を利用して進むかを判断します。

### ③ 亜熱帯高圧帯付近

弱風域を避け、貿易風をつかむ航路を探します。

### ④ 大西洋横断

北寄りの短い航路か、南下して安定した東寄りの風を使うか。

艇種と気象によって選択が分かれます。

### ⑤ グアドループ島周辺

島の風下の弱風、局地風、島を回り込む最後の戦術が勝負を左右します。

特に最後のグアドループ島周辺では、数千海里を走って築いたリードが一気に縮まることがあります。

そして、北大西洋を南下するレースだからこそ、北の荒天と南の貿易風の両方を読む能力が求められます。

## 6. 2026年大会 ― 第13回ルート・デュ・ラム

2026年10月25日時点の大会情報です。

スタート:11月1日(日)

スタート時刻:現地13時02分/日本時間21時02分

参加予定:115艇

参加クラス:6クラス

公称距離:約3,542海里

ゴール:グアドループ島ポワンタピートル

天候によってスタート日時が変更される可能性があります。

### 6つのクラス

**ULTIM**

巨大な高速トリマラン。総合優勝争いの中心です。

**IMOCA**

60フィートの外洋モノハル。ヴァンデ・グローブにつながるクラスです。

**Ocean Fifty**

50フィートの高性能マルチハル。

**Class40**

40フィートのモノハル。実力派セーラーが競います。

**Vintage Mono**

歴史あるモノハル艇。

**Vintage Multi**

ORMAなど、往年のマルチハル艇。

今年は歴史的なレーシングヨットが走るVintageクラスも見どころです。

## 7. 今大会で注目したい選手と船

### ULTIM:シャルル・コードリエ

新型「Gitana 18」で大会連覇を狙います。

2022年の大会記録をさらに更新できるかが焦点です。

### ULTIM:トマ・コヴィル

「Sodebo」で挑戦。

長年の外洋航海経験を持つベテランで、巨大マルチハルの扱いに熟達しています。

### IMOCA:ボリス・ヘルマン

2026年進水の新型「Malizia 4」で、初めてのシングルハンドレース。

新艇の速さと信頼性が試されます。

### IMOCA:セバスチャン・シモン

新艇「Groupe Dubreuil – Air Caraïbes」で参戦予定。

最新設計のIMOCA同士の比較も楽しみです。

### IMOCA:鈴木晶友

そして、日本から応援したいのが、鈴木晶友さんの「MILAI-FURUNO」。

かつてヴァンサン・リウやアーノル・ボワシエールが乗った世代のIMOCAです。

最新艇との性能差はありますが、経験と航海術を生かしてグアドループを目指す姿に注目したいですね。

## 8. ルート・デュ・ラムとミニ・トランザット

両レースには共通点と違いがあります。

### Route du Rhum

艇:複数クラス

出発地:サン・マロ

中継地:原則なし

開催周期:4年

ゴール:グアドループ

### Mini Transat

艇:Mini 6.50

出発地:大会ごとに異なる

中継地:2レグ制

開催周期:2年

ゴール:大会によって異なる

共通点は、どちらも単独大西洋横断レースであることです。

1999年にORIONで出場したミニ・トランザットは、ランサローテ島を経由してグアドループへ。

今回のルート・デュ・ラムはサン・マロから直接グアドループを目指します。

同じ大西洋でも、スタート時期、航路、船の大きさ、速さによって、戦い方は大きく変わります。

## 9. どこで観戦する?

Route du Rhum 2026公式サイト

https://www.routedurhum.com/

出場選手、最新ニュース、レース情報を確認できます。

大会が始まれば、公式サイトからレース追跡情報もチェックできます。

## 10. ルート・デュ・ラムの本当の魅力

1978年、マイク・バーチが小さなトリマランで巨大なモノハルを破った。

1990年、フロランス・アルトーが歴史を変えた。

そして現代、巨大なULTIMがフォイルで海面を飛ぶように走る。

船は進化し、航海機器も発達しました。

しかし、一人で大西洋を渡るという本質は変わりません。

天候を読み、船を修理し、眠気と戦い、自分で決断する。

**最後に頼れるのは、自分自身。**

1999年、フランスの造船所に泊まり込み、自分の船を組み立てて大西洋へ出た日々。

そして、グアドループの港に着いて、レストランで乾杯した思い出。

ルート・デュ・ラムは、速さを競うレースであると同時に、一人ひとりの人生が詰まった冒険でもあります。

そこが、このレースの一番面白いところだと思います。

**Bon vent !(よい風を!)**

このブログの人気の投稿

ラビ ヒレルの格言

③ ヨットの守破離

円相