ヨットは海に浮かぶ学校 外洋レースから学ぶ

昨日、紀尾井町の文春ギャラリーで開かれている個展に行き、ヨットの先輩の作品を観てきました。
そこで、KCC慶應のヨット部の後輩で、現在フランスでミニクラスのレース活動をしている女性セーラーの話になり。
話題は「ヨットを使った教育活動」へ。
子どもたちにヨットや海を通して、何かを伝える活動をしてみたい――そんな話だったと思います。
そこで私は、
「だったら、フランスやアメリカには、ヨットレースと子どもたちの教育を結びつけた活動が昔からあるよ」
という話をしました。
フランスでは、ミニ・トランザット。
アメリカでは、BOC単独世界一周レース。
もちろん、レースそのものは大人たちが命懸けで挑戦する外洋レースです。しかし、その冒険をただのスポーツとして終わらせず、学校教育につなげようという取り組みがありました。
航海には、地理があります。 気象があります。 海流があります。 数学があります。 船の構造や物理があります。
そして何より、
「自分で考えて、自分で決めて、自分で進む」
という学びがあります。
ヨットは、海に浮かぶ小さな学校なのかもしれません。
今日も、昔懐かしの話です。
手元に残っている、BOC単独世界一周レースの教育用テキストから、少し紹介してみたいと思います。
便利な世の中になりました。
昔なら、英語の辞書を片手に何時間もかけて読んだ資料も、今ではページの写真を撮れば、AIが一瞬で訳してくれます。
30年以上前のヨットの教材を、2026年にAIと一緒に読み直す。
これもまた、なかなか面白いものです。
AI訳です。
もちろんです。これは 1994–95年 BOC Challenge(単独世界一周レース) の教材『BOC OCEANWATCH Teacher’s Guide』の序文ですね。
マーク・シュレーダー(Mark Schrader)が書いた文章です。
マーク・シュレーダーによる序文
BOC Challengeで優勝するのは、まず夢を持ち、その夢を目標へと変え、そして実現するために懸命に努力した人でしょう。
しかし、成功するためにBOC Challengeで優勝する必要はありません。
この27,000マイルに及ぶ単独航海レースを完走した人は、誰もが勝者です。
夢を追い、一つひとつの困難を乗り越え、最後にそれを成し遂げる。
その満足感こそが、努力と犠牲に対する最高の報酬なのです。
人生に目標を持つ人の前には、まるで大海原のように、たくさんの困難が待っています。
人生とは、そうした困難と向き合い、それにどう応えるかということです。
困難には大きなものもあれば、小さなものもあります。
自分から求めて挑戦するものもあれば、突然やってくるものもあります。
そして私たちが、自分自身をどう評価するかを考えたとき、
「勝ったか、負けたか」よりも、逆境に直面したときに「自分がどう行動したか」のほうが大切なことがあります。
BOC ChallengeとStudent Ocean Challengeは、生徒たちを、刺激に満ちた世界規模の冒険の真っただ中へ連れていきます。
そこでは、夢を持つこと、目標を定めること、そして困難に立ち向かうことの価値を、はっきりと見ることができます。
BOC Challengeに参加する選手とそのチームにとって、このレースは非常に大きな決意を必要とします。
少なくとも1年、多くの場合は2年、3年という年月をかけ、集中力を保ち、チーム全体で努力を続けなければなりません。
レースが始まるずっと前から、選手たちは何千マイルもの航海練習を行っています。
海上テストでは、装備が壊れます。
セイルが裂けます。
電子機器が故障します。
そうした初期の失敗は、人を苛立たせます。
そして挫折するたびに、
「努力を続けるより、やめてしまったほうが楽だ」
と思えてくるものです。
しかし、それでも前へ進んでいくのです。
こうした基本的な人生の教訓を伝えるだけでなく、BOC Challengeは「BOC OCEANWATCH」を通して、より本格的な教育の場にもなっています。
そこにはStudent Ocean Challengeプログラムも組み込まれています。
世界を一周する船団は、驚くほど多様な気候、文化、そして自然条件に出会います。
そのため、このレースそのものが、この『BOC OCEANWATCH Teacher’s Guide』を通して、**理想的な「海に浮かぶ教室」**になるのです。
アメリカ・ワシントン州スタンウッド
1994年3月
マーク・シュレーダーについて
1982〜83年、マーク・シュレーダーは、世界の南端にある5つの岬を単独で回航した最初のアメリカ人となりました。
その航海には199日を要しました。
その後、1986〜87年のBOC Challengeに出場。
1990〜91年大会ではレースディレクターを務め、そして1994〜95年大会でも再びレースディレクターを務めています。
この序文、ミサさんの経験と重ねて読むと、かなり響く文章だと思います。
特に私はここがこの文章の核心だと思います。
「完走した者は誰もが勝者である。」
「勝ったかどうかより、逆境に直面したとき、どう振る舞ったか。」
単独世界一周レースを、単なる「ヨット競技」ではなく、人生や教育そのものとして捉えているんですね。
1994年に書かれた文章ですが、今読んでもいい序文です。


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