フランスの単独外洋レース・トレーニングセンター


フランスの単独外洋レース・トレーニングセンター
Pôle Finistère Course au Large
少し昔話から始めます。
1990年代、自分がフランス・ブルターニュの造船所に泊まり込み、自分のヨットを造っていた頃、他の港へ行く途中などに**Port-la-Forêt(ポール・ラ・フォレ)**へよく立ち寄りました。
当時フランス語もよく分からなかった自分は、Forêt=森なので、勝手に**「森のマリーナ」**だと思っていました(笑)。
もちろん当時からブルターニュは外洋レースの盛んな土地で、ミッシェル・デジョワイヨーなど、後に世界を代表するセーラーたちが活躍していきます。しかし当時の自分は、そこが後にこれほど重要な場所になるとは考えてもいませんでした。
自分が再びポール・ラ・フォレを気にするようになったのは、MACIFのフランソワ・ガバールが登場した頃です。
Vendée Globeを制したガバールをはじめ、その後もシャルリー・ダラン、ヨアン・リショーム、ジャン・ル・カムなど、世界最高峰の外洋レーサーを調べていると、不思議なくらいこの場所につながってきます。
なぜフランスから、これほど強い単独外洋レーサーが次々と現れるのか?
その理由の一つが、
Pôle Finistère Course au Large
(ポール・フィニステール・クルス・オ・ラルジュ)
です。
ここは普通のヨットスクールではありません。
フランス・スポーツ省の認定を受けた、国家レベルの単独外洋レース・トレーニングセンターです。
FigaroからIMOCA、そして単独無寄港世界一周Vendée Globeへ。
すでに高い技術を持った選手たちが集まり、航海技術だけでなく、気象、戦術、体力、睡眠管理、船の性能まで研究し、ライバル同士でありながら一緒にトレーニングしています。
日本風に言えば、**「単独外洋レース界の虎の穴」**とでも呼べる場所でしょう。
そして現在開催されているThe Ocean Race Atlanticを追いかけてみると、またここにつながってきました。
United by the Oceanのポール・メイヤ、11th Hour Racingを率いるイタリア人女性セーラーのフランチェスカ・クラプシッチ、そしてDMG MORI Global Oneで白石康次郎さんと一緒に大西洋を走るサム・デイヴィスとニコラ・リュンヴェン。
30年以上前、自分が何気なく立ち寄っていた「森のマリーナ」。
今になって調べてみると、そこにはフランスが世界トップクラスの外洋レーサーを次々と生み出す仕組みがありました。
今回は、日本ではまだあまり知られていない、このフランスの単独外洋レース・トレーニングセンターについてです。

💌AIジャーナリスト リサーチ

もちろんです。

フランスの単独外洋レース・トレーニングセンター
Pôle Finistère Course au Large(ポール・フィニステール)
現在、大西洋をニューヨークからフランス・ロリアンへ向かって走っている The Ocean Race Atlantic 2026。
このレースを追いかけながら選手たちの経歴を調べていると、何度も同じ名前にぶつかります。
Pôle Finistère Course au Large
(ポール・フィニステール・クルス・オ・ラルジュ)
日本ではほとんど知られていないと思います。
簡単に言えば、フランス・ブルターニュ地方のポール・ラ・フォレにある、単独外洋レースのトップセーラーたちが集まるトレーニングセンターです。
ただし、普通の「ヨットスクール」とはまったく違います。
これからヨットを覚える場所ではありません。
すでに高いレベルに達した選手たちが集まり、FigaroやIMOCAなどで世界のトップを目指すために、航海技術、気象、戦術、体力、睡眠、船の性能などを研究しながら一緒にトレーニングする場所です。
フランスでは、こうして単独外洋レースを「個人の冒険」だけではなく、トップスポーツとして選手を育てる仕組みが作られてきました。Pôle自身も、プロの外洋レース選手やすでに実績を持つプロジェクトリーダーを対象とするトレーニング組織だと説明しています。
なぜフランスは外洋レースが強いのか?
以前のブログで紹介した Figaro(フィガロ) が、ここで重要になってきます。
小さなディンギーなどでヨットの基本を身につけた若者が、Figaroの世界へ進み、**La Solitaire du Figaro(ソリテール・デュ・フィガロ)**のような厳しい単独レースで腕を磨く。
そして、その中のトップ選手がIMOCAへ進み、最終的には単独無寄港世界一周の **Vendée Globe(ヴァンデ・グローブ)**を目指します。
その流れの中心の一つにあるのが、Pôle Finistèreです。
つまり、
ディンギー → Figaro → 単独外洋レース → IMOCA → Vendée Globe
というフランス独特の「外洋レーサーの道」があるのです。
もちろん全員が同じ道を通るわけではありません。しかし、この育成環境がフランスの外洋レースの強さを支えていることは間違いありません。
今走っている選手たちも、ここにつながっている
面白いのは、現在の The Ocean Race Atlantic の選手を調べると、Pôle Finistèreにつながる名前が次々と出てくることです。
まず United by the Ocean のスキッパー、ポール・メイヤ(Paul Meilhat)。
以前紹介したように、彼も若いころレーザーなどのディンギーからスタートし、Figaro、IMOCAへ進んできたフランスのトップセーラーです。
そしてPôle FinistèreのIMOCAメンバーにも名前があります。
今回のThe Ocean Race Atlanticでは、ポルトガルのマリアナ・ロバト、アメリカのサラ・ストーン、フランスのベンジャマン・フェレらとUnited by the Oceanで戦っています。
イタリア人女性スキッパー、フランチェスカ
もう一人、今回とても面白い存在が、**11th Hour Racingのフランチェスカ・クラプシッチ(Francesca Clapcich)**です。
イタリア出身の女性セーラーで、オリンピッククラスから外洋レースへ進み、Solitaire du Figaroにも挑戦しています。
そして現在は、2028年Vendée Globe出場を大きな目標にしてIMOCAで経験を積んでいます。
今回のThe Ocean Race Atlanticでは唯一の女性スキッパーです。
ここにも、オリンピックなどのディンギー競技から外洋へ進み、Figaroを経験し、さらにIMOCA、Vendée Globeへ向かうという「フランス外洋レース文化」の道筋が見えてきます。
そしてDMG MORIのサムとニコラ
さらに興味深いのが、現在白石康次郎さんと一緒に DMG MORI Global One に乗っている二人です。
**サム・デイヴィス(Samantha Davies)**と
ニコラ・リュンヴェン(Nicolas Lunven)。
この二人はPôle Finistèreとの関係が非常に深い選手です。
イギリス人のサム・デイヴィスは、2004年からPôle Finistèreに所属してきたベテランで、Vendée Globeをはじめ世界の外洋レースで長年活躍しています。
そしてニコラ・リュンヴェンもPôle Finistèreのメンバー。
彼はFigaroで長年腕を磨き、Solitaire du Figaroを3度制覇している、まさにフランス式の単独外洋レーサーです。2024-25 Vendée Globeでも6位に入りました。
つまり今回、白石康次郎さんのDMG MORIには、
白石康次郎
+ サム・デイヴィス
+ ニコラ・リュンヴェン
+ 守屋亜里沙
というメンバーが乗っています。
サムとニコラという、Pôle Finistèreで長年鍛えられてきた二人が白石さんと同じ船に乗って、大西洋を走っているわけです。
白石康次郎は少し違う道からフランスへ来た
ここが私には一番面白いところです。
白石康次郎さん自身を単純に「Pôle Finistère育ち」と呼ぶことはできません。
白石さんは日本から外洋レースの世界へ飛び込み、自分自身の道を切り開いてフランスのIMOCA界へ入っていった人です。
しかし、世界最高峰のVendée Globeを戦うようになると、当然ながらフランスのトップセーラーたちと一緒に練習し、情報を交換し、同じ海を走ることになります。
現在のDMG MORIを見ると、その長い積み重ねの結果として、Pôle Finistèreで育ったサムやニコラのような選手たちと、今では同じ船の仲間として大西洋を戦っているのです。
ヨットは一人で走っていても、一人では育たない
Vendée Globeは「単独世界一周」です。
海の上では、最後は一人です。
しかし、その一人のセーラーを作るためには、コーチ、気象専門家、船の技術者、トレーナー、そして一緒に練習するライバルが必要です。
Pôle Finistèreを調べてみて、フランスの外洋レースの強さは、単に「すごい船乗りがたくさんいる」ということではないように思いました。
一人で海へ出る人間を、みんなで育てる。
そこにフランスの強さがあるのでしょう。
そして今、その世界で日本人の白石康次郎さんが、サム・デイヴィス、ニコラ・リュンヴェンたちと同じIMOCAに乗り、The Ocean Race Atlanticのトップ争いをしています。
レースの順位だけを見ていると分からない世界です。
選手の経歴を一人ずつ調べていくと、現在走っている一艇の後ろに、フランスが何十年もかけて作ってきた単独外洋レースの文化と育成システムが見えてきます。
The Ocean Race Atlanticを追いかけていたら、いつの間にかフランスの「外洋レーサーを育てる学校」にたどり着きました。
ヨットレースは、調べれば調べるほど面白いですね。






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