箴言7:27〜8::1
その家は陰府へ行く道であって、死のへやへ下って行く
知恵は呼ばわらないのか、悟りは声をあげないのか。
משלי ז כז
דרכי שאול ביתה ירדות אל חדרי מות
הלא חכמה תקרא ותבונה תתן קולה
この言葉は、二つの聖書箇所が重なっています。
前半
「דרכי שאול ביתה ירדות אל חדרי מות」 ―「彼女の家の道はシェオル(黄泉)へ下り、死の部屋へ至る」 これは『箴言』に出てくる警告の言葉です。
後半
「הלא חכמה תקרא ותבונה תתן קולה」 ―「知恵は呼びかけているではないか。悟りはその声を上げている」 こちらも『箴言』の有名な箇所です。
つまり、 「欲望や迷いの道」と 「知恵の呼び声」 この二つが対比されています。
ユダヤ的学びでは、 人生は常に 「どちらの声を聞くのか」 という問いだと考えます。
まるで海の上で、 暗礁へ向かう流れと、 灯台の光の両方があるような感じですね。
ユダヤ人の学び
ユダヤ教では、 「学ぶこと」そのものが神への奉仕です。
特に重要なのは、 「答えを覚える」より 「問い続ける」こと。
タルムードでは、 ラビ同士が何ページも議論し、 結論が一つにならないこともあります。
しかし、 その議論自体が尊い。
だから手島先生の 「トーラーには答えがない」 という教えは、 かなりユダヤ的です。
有名なラビ三人の教え
1. ラシ
トーラー注釈で最も有名。
教え: 「聖書は単純な意味をまず読む」
深読みする前に、 まず本文を大切にする。
ユダヤ人は、 文字を非常に尊重します。
2. バアル・シェム・トーブ
ハバットの源流にもつながる人物。
教え: 「神は日常の中にいる」
難しい修行だけではなく、 食事、仕事、歌、 普通の生活の中にも神性がある。
これは、 ミサさんの 「海の上の茶会」 にも近い感覚があります。
3. ヴィルナ・ガオン
非常に厳格な学者。
教え: 「人は一生、自分を修正するために生きる」
ヘブライ語で 「ティクン(修復)」。
魂を磨くことです。
ハバットの教え
ハバッド・ルバヴィッチ では、
「脳(Chochmah)」 「理解(Binah)」 「知識(Daat)」
この三つを大切にします。
ハバットとは、 この頭文字です。
つまり、 感情だけでなく、 理解を通して神を知る。
あなたがよく言う 「右脳だけではなく左脳も」 という感覚に少し似ています。
ゾハールの解釈
ゾハール では、
「知恵の声」は、 魂の奥から来ると考えます。
しかし人は、 欲望、 怒り、 名誉欲、 恐れ、 執着によって、 その声を聞けなくなる。
だから、 静寂が必要。
カバラでは、 夜の海、 砂漠、 安息日、 沈黙は、 神性を感じやすい時間と言われます。
単独航海で 「神を感じた」 という感覚は、 かなりカバラ的です。
なぜなら、 外の騒音が消えると、 内側の声が聞こえるから。
カバラの教え
カバラでは、 世界は 「光」と「器」 でできています。
神の光は無限。
しかし、 人間の器が小さいと、 光を受け止められない。
だから人生とは、 器を育てる旅。
知識、 苦労、 愛、 失敗、 孤独、 祈り。
それらによって器が広がる。
海の航海も似ています。
最初は、 小さな波でも怖い。
でも、 経験を積むと、 嵐の中でも静かでいられる。
それが、 魂の器の成長。
そして箴言は最後に、 静かに問いかけています。
「あなたは、 どの声を聞くのか?」
欲望の声か。
それとも、 知恵の声か。
ヘブライ語を一単語ずつ見ると、かなり味わい深いですね。
דרכי
「道」「道筋たち」
(דרך derekh = 道)
שאול
「シェオル」
黄泉、冥界、死者の世界
ביתה
「彼女の家へ」
בית = 家
-ה = 「彼女の」
ירדות
「下っていく」「下降する」
ירד = 下る
אל
「〜へ」
חדרי
「部屋たち」「奥の間」
חדר = 部屋、奥座敷
מות
「死」
ここまで直訳すると、
「シェオルの道は彼女の家へ、 死の奥の部屋へ下っていく」
という感じです。
הלא
「ではないか?」 「見よ」 「本当に」
חכמה
「知恵」
תקרא
「呼ぶ」 「呼びかける」
ותבונה
「そして悟り」 「理解」 「分別」
תתן
「与える」 「発する」
קולה
「彼女の声」 קול = 声
後半を直訳すると、
「知恵は呼びかけているではないか。 悟りはその声を発している」
となります。
面白いのは、
前半は 「下へ下へ」
後半は 「上から呼ぶ声」
という構造になっていることです。
カバラでは、 人間は常に
下降(欲望・混乱) と 上昇(知恵・理解)
の間にいる存在だと考えます。
まるで海で、 潮に流される力と、 灯台の光に導かれる力、 その両方の中にいるようですね。