スリーホートの祈り
詩の作者 レーゲンスブルグのエフライム・ベン・イツハク 市川裕訳

すみかの一帯が失われ、神の住まわし天幕ももぬけのからになったとて、どうか我らに道を失わせないでください。老いた父が我らにいます。その顔をあなたはご存知です。その人の義を我らはあなたの前に訴えます。
主は命じた。大切な息子をとりなさい。そしてその血を壁にぬりなさい。彼は息子を聖別するため、息子のもとへ走った。父の心と子の心とが結び合った。たき木と火を整えた。神の金の冠を頭上に。ひとり子は鹿のごとく、足並み軽やかだった。そして父に向かってこう言った。父よ、ごらんなさい。火とたき木を携えるのに、捧げものは持っていないのですか。父は子をおびえさせまいと、ことばを返して言った。子よ、神はご自身でわかっています。主はご自分のものをご存知なのだよ。彼ら二人は、あなたの掟に忠実に心をくだき、あなたのことを詮索してはいない。道を急いで進んでいった。
山のひとつ、その頂へ、そこには、霧がたちこめている。急ぎたき木を整える。二人はともに、愛に満たされて荒野に道を直くした。ひとり子は我が身が羊と知った。その試練を受けた父にこう語った。父よ、わたしを羊のごとく為したまえ。惜しんではいけません。かばってはいけません。主はわたしを心からお望みなのですから。我が主に示します。たとえあなたがわたしをさまたげても、どうにもなりません。我が霊と魂は主のもとへ集められました。
父は子の両手と両足をしばった。その剣を整えた。たき木の上に、おもむろに息子を置く、火が祭壇で燃えようとする。首を体から前へ伸ばす。火は子に近ずく。主のために子をほふらんとする。そのとき、みよ、主はその場にあらわれ、彼のもとに、その一部始終を加味した。父は子を惜しまなかった。心の欲することをその両手で為した。神はそのすべてをみた。
晩の立つはじめから、彼はよばわった。輝ける汝の息子をとりかえなさい。すると、みよ、別の雄羊がいる。さあ行いなさい。おくれないように。その記念の身代わり、準備を整えよ。主の捧げ物の燔祭の如くその身代わりを捧げなさい。彼とその身代わりは、天においてあなたの御前にあって記念となろう。とこしえに、その巻物に刻まれよう。とわの契約、消去されることはない。
あなたを呼ばわる者らは、来たりてアブラハムとイサクを指し示そう。苦しみのとき、どうかイサクの犠牲を思い出してください。そして、あなたの羊の群れを悲しみをもって裁いて(覚えて)ください。群れの顔を、捧げられしイサクへ向けて、あなたの大きな力をめざめさせ、眠れるものたちをおこして下さい。あなた自身のために、眠りに落ちた敬虔な者らを贖って下さい。悲しみと愛を天の高みより注いで下さい。
レンブラント アムステルダム国立美術館